知人に誘われ、イノベーションスプリント2011に参加しました。
概要はこちらを御覧ください。
http://innovationsprint.com/
今回の目玉は何と言っても、今非常に注目されているマネジメント手法
「スクラム」の生みの親である「ジェフ・サザーランド」博士と
そのスクラムの元となった論文を書かれた「野中 郁次郎」教授との対談です。
これ以外にも「東証の新株式売買システムの開発プロセス」といった
開発事例の話なども沢山あり、600人の定員があっという間に埋まったそうです。
朝11時から19時まで濃厚な話がミッシリ詰まっていたので
とても全ては書ききれませんが、私が印象に残った話だけ備忘録も兼ねてピックアップします
■Roots of Scrum
野中 郁次郎 氏
- 20年眠っていた論文がこういう形で昇華され、非常に嬉しく思う
- 成功は失敗のもと
- イノベーションとは新しい価値の創造。iPadはCPUやディスプレイなどの集合体ではない。それを使う事に対する価値が組みこまれている。
- ホンダのワイガヤ。温泉宿に3日3晩泊り、延々と話し合う。形式知は直ぐに尽き、本質だけが残る。触れ合う事が重要。(旨い物と温泉も重要)
- イノベーションにはプロセスのクオリティが重要。その為には生きた分脈の共有(場)とリーダーシップが重要。
- 実践知のリーダー→失敗の経験を積む事で最善の判断が出来るリーダー
- 知的体育会系→動きながら考えぬく
- スクラムは近代的徒弟制度
- 現実歪曲空間-出来ないと思えるようなことを出来ると思わせる力。スクラムマスターに必要
ジェフ・サザーランド 博士
- プロジェクトの成功率は94年で16%、2000年28%、2009年32%。依然低い
- 未来が読めるプロセスと読めないプロセス。ウォーターフォールは未来が読めるプロセス向き。未来が読めない事が前提であるソフトウェア開発にウォーターフォールを適用すると失敗する
- ガントチャートも未来が読める場合のみ有効。それ以外はバーンダウンチャートを使うべき
- XELOX amalltalk ATT Bell より良い開発手法を探した
- ルンバを見たらスクラムと思え
- ブルックスの法則(人月の神話)→1チーム3~7人がベスト
- 役割が多いほど生産性は落ちる
- XELOXがイノベーションを起こしたプロダクトは、チームメンバーが全て10人以下
- 現在世界で10万チーム以上がスクラムを行っている
- 書類はナローバンド。ホワイトボード前での会話はブロードバンド
■東証新株式売買システム arrowheadにおける開発プロセス
- 世界一の株式売買システムを作る
- 東証から75名。富士通から500名。有明にオフィスを作り、全員が同じ場所で約3年掛けて開発
- RFP1500ページ。仕様全体で4000ページ
- 上流工程完璧主義。徹底的にテスト。決して後戻りしない。
- 顧客(東証)も本気。決して投げっぱなしではない
- スローガン「One Team One Dream」
- 1週間の内、4日間はミーティング。コミュニケーションが重要
- 上流でテスト、下流でPDCA
- 世界一を目指す。何度も何度も言い続けた。
- 基本はウォーターフォールだが、リスク管理、コミュニケーション、フィードバック等、アジャイルにも共通する単語が数多く出てきた
■Infragisticsにおける世界分散アジャイル開発事例
- 元プログラマー。担当はメモリリークする事
- 世界中にオフィス。ビデオチャット、Skypeで常にフェイス2フェイス
- エクセルからTFSで管理。APIが公開されているので改良
- アジャイル開発を採用→オフィスもアジャイル仕様に。ミーティングルームの追加。壁一面のホワイトボード。チームがまとまって仕事が出来る机の配置
- ツールが上手く準備出来ないと、アジャイルの実現は難しい
■NTTデータにおける制約理論を活用した分散アジャイル開発
- ここ最近1年以内の短期開発が非常に増えている
- NTTは30カ国128都市に20000人が働いている
- 分散開発は必須。今回はインドとの分散開発
- WebEXによるビデオチャット
- コミュニケーションは重要だが重要と判っていて敢えて減らす努力
- インド、日本双方にスクラムマスター。POは日本。インドにPO代理。
- スラムマスター2名とPO、PO代理の4名で要求定義。
- 見積もりは日本とインド両方が行い、見せ合うことで精度を高める
- ストーリー単位で五月雨式に開発。ソースはロック。
- 進捗やボトルネックなどを全て透明化。
- クオリティゲート管理。リリースバッファ
- マネージャーの役割は外部のノイズから開発チームを守ること
■初代プリウスの開発と組織風土
- 将来的なVisionに基づく決断と全社的なベクトル合わせ
- 開発体制作り-CEの存在。尊敬の対象
- チャレンジ精神、強い責任感とリーダーの裁量
- 現地現物-技術者の情報は現場で裏付けされた物が要求される
- なぜなぜ5回-問題の理由を5回も突き詰めると、真の原因が見えてくる